刷毛と大地

毎日、ほんの少しずつ。遺跡を発掘しているようなもんだ。シャベルで掘り進むわけじゃない。手に持っているのは刷毛だ。その刷毛で慎重に、大地を覆った砂を払って進む。一日に進めるのはほんの数センチ。数ミリかもしれない。何日もかかってようやく掘り出したものがただの石ということもざらだ。
夕暮れになって辺りを見渡す。夕陽も届ききれないくらいその大地は広大だ。遺跡なんか壊してしまいたくなる。だけど時々とんでもない自分を発掘し、それが事実をひっくり返す。或いは、裏打ちする。だから結局刷毛を持ってここに戻って来る。そしてその涯てのない大地が歓びともなるのだ。


~Canon's word -Synchronicity-op20~

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